偶然の不一致

 

偶然の不一致

 

 

 

 マスコミ感覚を以ってすれば、今の江尻はネタにならない。

 

 手を変え品を変え記事にまとめるのは、餅は餅屋でも結構難しいものだ。最近の情に走る傾向も、そういう訳でお許しを願いたい。そこで、今回は、最近二試合での連続ノックアウトをどう見るべきか、考えてみた。

 

 ちょうど、プロ初勝利を挙げたのが、昨年4月21日の西武戦、一軍に上ったその日の出来事である。6回と2/3を投げて自責点は3と言う内容だった。これで、先発ローテーション入りを果たし、次の登板は4月28日の近鉄戦。が、1イニング連続6安打のつるべ打ちに遭って3回と持たずに降板している。そして、5月4日のダイエー(当時)戦では松中・ズレータの本塁打攻勢によって、これ又撃沈されてしまった。

 

 昨年は初勝利、今年は初完封の後だった。二つのノックアウト劇は判で押したように、快挙の後にやってきた。

 

 昨年7月3勝を挙げた時点で、CM出演の打診をしたことがあった。打診する方もする方だが、返って来た答えは、「3勝しただけの自分が有頂天になるのが怖いんです」と言う律儀なものだった。快挙の後の連続ノックアウトは自分を抑え過ぎた結果である。抑えるべきは慢心のみでよかった。

 

 江尻が望む無心のハイテンション。諸刃の剣の一方を己に向けねば実現は適わない。が、これが難しい。昨年は、二度目のノックアウト後ファームに落とされた。慢心と向き合った結果、復帰後に価値ある4勝を挙げ得た。

 

 今年は、投壊寸前のチーム事情で一軍に残された。二軍で立て直すチャンスを与えられた昨年と、消去法によって一軍に留まった今年、同じ轍を踏んで、この違いだ。単なる偶然の不一致だろうか。慢心をバネにテンションを高めなければ、戦いの場は待ってはくれない。

 

 セパ交流戦対巨人5回戦。4対3とリードした6回表からマウンドに立った江尻は気迫の投球で、3番ローズをキャッチャーフライ、4番小久保をセンターフライ、5番DH高橋をスイングアウトの三振に取った。

 

 総力戦の中継ぎはプレッシャーが掛かる。7回裏、6番元木・7番阿部に連打を許し、8番齋藤の送りバントは送球を焦って3塁に悪送球してしまう。ノーアウト満塁。9番仁志をショートゴロゲッツーに仕留めるが、3塁ランナー元木が還って同点に追いつかれた。ここでお役御免。1回と2/3を投げ自責点は1、勝ちも負けも付かない何とも未消化なマウンドだった。(結果は、昨日に引き続き延長12回5対5の引き分け)

 

 これからだ、江尻。総力戦の中で、明日に繋がる手ごたえを積み重ねるのだ。3万5千の大観衆を引き連れた投球は、さぞや快感であったろう。一軍はこれから未知のマウンドが続く。己の羅針盤を信じて、自分を解き放て!!結果はついてくるものだ。

 

 東北朝日プロダクション  斎藤 茂

 

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