一足早い夏季休暇

 

一足早い夏季休暇

 

 

 

 夏の高校野球宮城大会の二回戦で、仙台二高48回卒の佐藤漸(ぜん)率いる聖和学園が、第四シード校の仙台東に6対3と敗れた。初陣を飾って、台風の目になるのではと期待を抱かせたが、やはりシード校の壁は厚かったようだ。

 

 聖和学園野球部には勝利のパフォーマンスがある。ニュージーランドラグビー代表のオールブラックスのウォー・クライに似ているような、それでいて、佐藤が海外青年協力隊の一員としてタイに野球指導に赴いた際の影響も色濃く取り入れた「おどり」である。これをベンチ前で選手にやらせる。大したアピール効果だ。アイディア指導の一端が窺える。本人曰く、エース江尻を擁して夏の県大会を不本意に終わらせてしまった高校時代の悔いが、現在の背骨になっていると。主将で主砲が、その時の左の佐藤だった。

 

 22回卒業の横田一秀(前仙台二高監督)率いる仙台向山との師弟対決が、今後実現することを願いたい。野球に個性を注ぐ江尻、似て非なる横田に、そして佐藤。人それぞれの悲喜こもごもがあって、マスコミ業界が繁盛し、雑文がものに出来る仕組みだ。

 

 さて、日本ハム対楽天の9回戦が、7月15日、札幌ドームで行われた。楽天の先発は岩隈。江尻自身、球界を代表するエースと称える存在だ。

 

 1回表、楽天の攻撃。1番礒部の当りは、セカンド木元の脇をかすめてセンター前へ。飛んだコースに恵まれた。2番沖原の送りバントの後、3番吉岡がレフト線にタイムリー2ベースヒットを放ち、あっさり先取点をものにした。更に、4番山崎もレフト前ヒット。江尻が打たれたのはいずれも決め球のフォークボール。吉岡には内角の打ちごろを、山崎には落ちない棒球を痛打された。そして、1アウト3塁1塁から5番益田にレフト犠牲フライを上げられ、2点目を献上した

 

 2回表も楽天は、7番飯田のライト前ヒットを足掛かりに、1番礒部のレフト前タイムリーヒットで1点を加え、3対0とリードを広げる。しかし、楽天のエース岩隈にも本来のキレがない。2回と3回に稲葉と小笠原に本塁打を打たれて、4回には同点に追いつかれた。

 

 5回表、楽天の攻撃。2番沖原がバットを折りながらセカンド右へ内野安打。3番吉岡が今度は鮮やかにレフト前へ。そして4番山崎がショートの右へ。これもバットを折りながらの内野安打となった。1アウト満塁。ピンチの割には、江尻、打たれた気がしなかったろう。が、5番益田のレフト前タイムリーヒットで2点を失い、又しても、5回の鬼門を不通過に終わってしまった。後を受けた横山も3連打を許し、この回5失点。逆に8対3とリードを貰った岩隈が、その後を締めて完投勝ちを収めた。

 

 岩隈の前で、火花も散らさずに退散してしまった江尻。追う者の強みを発揮できなかった裏には、キャンプからの蓄積疲労があった。今までの一軍フル参戦が江尻にとっては未知の世界、過酷な勝負の世界で集中力を保つ難しさを知ったことだろう。2シーズン連続で二桁勝利をものにしてきた、つわもの岩隈との差が歴然と出てしまった。

 

 今回の登録抹消が疲労回復・集中力喚起の妙薬となることを期待する。と、同時に、完封のおごりも綺麗さっぱり洗い流して来ることだ!!

 

東北朝日プロダクション  斉藤 茂

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